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2017.02.22

小沢健二が19年振りとなるシングル「流動体について」をリリースした。
前日にはテキストチャットによるインタビュー「私の平行世界」にて、シングルの発売とTV番組の出演情報(そのうちの1つは岡崎京子関連だという)などが伝えられ、発売日当日は朝日新聞の全面広告が打ち出された。
 
小沢健二というと『犬は吠えるがキャラバンは進む』や『LIFE』というアルバムで語られることが多いけれど、それ以上に短冊形のシングルにしか収録されていない曲にも名曲が多く、その作品群が彼の真骨頂と言えなくもないので(とはいえ前述のアルバムは間違いなく歴史的名盤ですが)、ライブやアルバムの発表以上にシングル発売はまさに復帰に相応しい感じがするのだ。
去年のツアー『魔法的』は事前にアナウンスされていた通り、新曲が多く披露され、そしてこれもアナウンスされていた通り、新曲の方が強く印象に残るライブだった。
ライブで初めて演奏される新曲には歌詞がスクリーンに映し出されることで、新曲をライブで発表するということ自体を作品にしたようなライブでもあり、アンコールでの新曲の振り返りと、再度演奏される新曲でもって、今までライブで新曲を聴くのとは全く違った感覚だったのを思い出す。
 
そういう意味では「流動体について」はそのライブの時間を一瞬で思い出させてくれる曲で、あのライブを体験してしまっている以上、シングルで初めて曲を聴く感覚は最早想像できない。
音源で聴くと改めて小沢健二復活を十二分に感じさせてくる言葉の力強さを再確認させられるし、特にその音像は印象的だ(2002年の『Eclectic』はD’angeloの『Voodoo』のような黒く禁欲的な音だったのだけれど、今作の音はまた違った異質感)。
と、その日は小沢健二の復活に1日浮かれているのかと思いきや、やはり『カルテット』が今週も凄かった。
今回はテイストが少し変わって松たか子宮藤官九郎による二者の視点から相反する想いを同時に振り返っていく回想シーンの連続だ。
今までに小出しにされてきた情報によって、予め起きる出来事は分かっているのに、実際の2人の恋に落ちる瞬間から、恋が冷めていく過程を見せられると、一次情報だけでは想像が及んでいなかったことに気付かされると共に、結婚生活の理想と現実の狭間に胸を締め付けられた。
最近『夫のちんぽが入らない』を読んだことや、橋口亮輔監督作の『ハッシュ!』と『ぐるりのこと。』を観返したこと、そして前クールのドラマである『逃げるは恥だが役に立つ』で家族という形の多様性について考えていたので(自民党憲法改正案もひとつのきっかけなのかもしれない)、かなり見応えのある回だった。
 
とはいえ、「おとなの掟」が流れ始めた瞬間からの圧倒的スピードで繰り広げられるサスペンスシークエンスには圧倒された。
これまでもメリハリの効いたサスペンスシーンが差し込まれてきたが、今回は更にインパクトがあり、6話目にして最終話直前のようなテンションのクリフハンガーをここに持ってくる手腕にはただただ痺れさせられ(雪の積もったロケーションやボタンの掛け間違いの連鎖にはコーエン兄弟の『ファーゴ』を想起させるし、宮藤官九郎が夫の役を演じ、殺人を取り巻く一家を描いた岩松了演出の『結びの庭』がこのドラマの背景にあるようにも思える)、坂元裕二宮藤官九郎満島ひかりが揃ったこのドラマはやはり奇跡的なのだ思う。
 
それにしても凄まじい1日だったけれど、24日は村上春樹の新刊『騎士団長殺し』の発売とアカデミー賞最有力の『ラ・ラ・ランド』の公開初日、そして小沢健二のTV出演、そして個人的にはJames Blakeの来日公演があるわけで、今週の充実具合に目眩がしてくる程だ。